九州中央山地の五家荘の山は、熊本県と宮崎県にまたがる主峰国見岳1739mを筆頭に、1000mから1700m級の急峻な山が連なり、県境に接する峰々は、日本三大急流のひとつ球磨川や日本一の清流と呼ばれる川辺川水系の分水嶺を形成している。 登山対象となる山々は30座を擁し、九州百名山にもその名を10座連ねている。平成23年11月には全国で6番目、九州では初めての日本山岳遺産に認定され、近年の登山ブームも手伝い、登山者の急増が著しい現状である。 本年2月には、希少植物の「福寿草」を鑑賞目的に、九州一円から1週間に約500名近い登山者が五家荘の一部の山域に訪れ、最近では海外からの登山者もたびたび見られている。 山域外周の登山道は約50kmで、それとは別に各山頂に到る登山道(ルート)が幾重もあり、すべての登山ルートの距離を合わせれば、約100qにおよんでいる。 これらの山の中には、比較的楽な「ファミリー登山」や「トレッキング感覚」で登れる山とルートもあるが、その多くはスズダケが濃く茂り、大きな倒木類が遮るアップダウンの激しい狭隘なルートであり、石灰岩が隆起して群がる岩場やガレ場、又は急斜面を横切るトラバース箇所など、ひとつ間違えば命を落としかねない危険が数多く潜在している。 最近は、登山者による大きな事故は無いが、過去には数件の行方不明者が発生しており、その内2名は、数日間の救助捜索活動にもかかわらず、現在に至るまで発見されていない。
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